エリザベート2004観賞日記A 11/23(祝・火)ソワレ


「私が踊る時」(Wenn Ich Tanzen Will)
この曲のイントロが頭から離れない。


 今回は@(11/8)の翌日、衝動的に梅コマへ電話して取った分でした。
 で、取ったあとに気付いたんですが、私の黄金キャスト「内野・鈴木・浦井」でなかったんですね! これが!
 フランツ・ヨーゼフ=石川禅さんだったのです。
 まあしかし、これもいい機会だと思って楽しみにしていました。


エリザベート 11/23(祝・火)17:00開演
◆Wキャスト◆
トート/内野聖陽
フランツ・ヨーゼフ/石川禅
ルドルフ/浦井健治


 2回目ということで、新演出の方向性も何となく理解して観賞。
 
さあ、これからが本番1回目は「追いかける」だけで必死だったので。

 キャストの皆さん、梅コマが最終公演地ということもあってか? 調子が良い。聴いていて気持ちがいい。
 音楽が全曲素晴らしいので、息をつく暇もないんですよね。そこが最大の魅力であり、魔力でもあるわけですが。この「エリザベート」は……

 今回のスペシャル注目曲は、今回の新曲(東宝2004年〜/宝塚では2002年〜)「私が踊る時」(Wenn Ich Tanzen Will)です。
 前回(11/8)はとにかく演出の違いやトートの登場する側を把握するのに必死だったので、堪能するまでは行かなかったんですが……いや、
この曲最高ですね!!
 2幕始まってすぐ、ハンガリー戴冠式のあとにトート×シシィの掛け合いで始まる「私が踊る時」。

 それまで皇太后ゾフィーや自分を束縛する宮廷に反抗する術を持たなかったシシィが、ハンガリーへ愛を向けることで「アウグスライヒ」(オーストリア=ハンガリー二重帝国同盟)を締結させ、ハプスブルクの歴史が大きく動くことになる……シシィはハンガリー王妃として戴冠し、ハンガリー国民から「エーヤン・エリザベート」の声に迎えられ、人生の勝利に酔う。その時、運命の馬車を御すトートが現れた……

 イントロの時、トートは馬車の御者台からシシィを見つめているのですが、内野トートのエラソーな態度と言ったらもう! 不遜と言うのか、冷酷と言うのか。
「勝ったのね」とシシィが叫ぶと「ケンカ上等・受けて立ってやろうじゃないか」という感じで馬車から降り、束ねていた髪を解き(ああ色っぽい。死にそう……)ファー付きのコートをひらりと脱ぎ捨てる!!
 この一連のエロ仕草もたまりませんが、曲そのものも非常に面白いのです。これはウィーン初演(1992年)からのナンバーではなく、ドイツ・エッセン公演からの新曲なのですが、それまで直接シシィとトートが掛け合いをするナンバーがなかったので、印象が強いです。
 まさにこれは「ケンカ上等」ソングと言っていいでしょう。
 強いシシィが「もう一人で歩けるわ 踊る時は私が好きな相手と 好きな音楽で!」と叫び、トートは「今は拒んでいても必ずおまえは俺を求める!」と返す。実はトートは、一刻も早く愛するシシィと踊りたいらしい。(内野聖陽インタビューより)、しかし今はとにかく、まばゆい輝きを放つシシィに負けるものかとばかりに傲慢に彼女の宣言を嘲笑うわけです。
 ここはラストナンバーにも通じるテーマですが、シシィとトートの主張は常に平行線。
シシィは「愛する人と踊る」と言い、トートは「それは俺だ」と言う。
 その二人の間の緊迫感が、何と心地よく響くことか!
 二人とも思い切り「ケンカ腰」で相手に向かっているものだから、ミュージカルではなくセリフ劇だと勘違いしてしまうほど。歌詞もケンカ上等仕様。

 声の重なりが素晴らしく、ラスト転調後などは「うおぉぉ〜たまらんぜ〜!」状態です。最後の「私が/俺が、え・ら・ぶ〜!!」という部分もハモリが素晴らしい。
 うっちーいつの間にそんなに歌うまくなったのさ!!!

 今回、ようやく「エリザベート・プロフェッショナル版」を買って帰り、もうその日から延々と「Wenn Ich Tanzen Will」のリピート。原語版もかっこいい。かっこいいが……なぜ2コーラス目の歌詞がスッポリ抜けて落ちているんですか……? エッセン盤持っていないので私、歌詞わからないよー!!
 トートが「シュパッツ(かもめよ)」と言っている部分は辛うじて聞き取れたんですが、これも先に日本語版を聴いていたからだし。(日本語版では「飛ぶがいい かもめよ」)
 ボレロのリズムが癖になります。さすが世紀末ウィーンが舞台だけあって、ワルツやボレロなど音楽も多彩で、改めて作曲家のシルヴェスター・リーヴァイフェチになってしまいました。
「Gold von den Sternen」(Mozart!)で完全にノックアウトされていたのですが、この「Wenn Ich Tanzen Will」で更に重症に。

 こんなに音楽的に面白いミュージカル、どうして英米で理解されないのか不思議でたまりません。まあアメリカは仕方ないとして(仕方ないのか?)わりと日本人と似た感覚を持つといわれているイギリス人になぜ受け入れられないんだろうか。「オペラ座の怪人」もエリザと同じようなデカダニズム・ミュージカルのはずなのに。
余談ですが「エリザベート」を上演した国は、欧州一部(オーストリア・ドイツ・ハンガリー・オランダ・スウェーデン)→突然ワープして東の果ての日本で異常ヒットという経歴を持ちます。
 なぜ日本でここまでヒットし、英米では上演さえもしていないのか。
 アメリカ人が「そもそもオーストリアとドイツの区別がつかない」(これは脚本のクンツェさんの弁だったかな?)のは仕方ないとしても(……そうか〜??)、同じ欧州のイギリスがオーストリアについて理解できないとか、関心がさほどない、というのが不思議。
 そして、なぜ「エリザベート」は日本人好みなのか。(もちろん日本人全員ではありません)
 この辺りは扇田昭彦氏の「ミュージカルの時代」の論評に詳しく書かれていますので、興味のある方はどうぞ。(es!Booksマイ書店参照)
 簡単に言えば様式美+「最後に死を迎える話は日本人にとっては馴染みが深い(歌舞伎の心中ものなどで)」――という感じでしょうかね?
 私の場合は「それもあるけど、とにかく音楽……」になるのですが。

 さて、話は変わって今回からダブルキャストになった新フランツ・ヨーゼフ/石川禅さんについて。
 私はこの人についてなーんの知識もなかったのですが(エリザに関してはフェチの域だけど、舞台全般についてはド素人なので)……うん、好みです。いい声でした。
 基本的に鈴木フランツと同路線の、ソフトな大人の声なのですが、石川フランツは歌詞が非常に聞き取りやすい。活舌がいいと言うのかな。声も鈴木フランツより幾分細い(?)のか若いのか、素人の私にはうまく表現できないのですが、鈴木フランツに劣らない、とても素敵な声でした。

 しかし息子ルドルフを叱責している場面などは鈴木フランツより厳しくて怖かった。鈴木フランツが失望を表現しているなら、石川フランツは憤激を表現をしていると思いました。

「夜のボート」も素敵でした。この曲は本当に素晴らしい……美しいのに内容が容赦なくて(これも扇田・小池対談で既出ですが)。もういい歳なんだから皇帝に寄り添って生きてやりゃあいいのにシシィ……とフランツに同情してしまうのですが、シシィは最後まで「駄目よ、私は」と言い張るのだから、まあ頑固な女性ですよね。扱いにくいことこの上ない。
 フランツ・ヨーゼフが、バート・イシュルでの見合いの勢いでシシィに求婚せずに、彼女の性格をある程度知るまで待つことが出来ていたら、もしかして求婚しなかったかもしれない。そういう意味では、シシィの姉のヘレーネの方が「良き皇后」となれたでしょう。反抗もせず放浪もしない良き妻に。
 しかしフランツは、恐らく自分にはないもの――シシィの「自由の輝き」、に魅かれたのだろうと思います。だから彼は、彼と同じように彼女の「生の輝き」を愛した死神と最後に対峙することになるのです。

 新曲と言えば、今回から皇太后ゾフィーにも死の間際に歌う曲が追加されていて、単なる敵役に終わらず深味が増していました。子供ルドとの新曲(メロは既存のものですが)もあり。

 そして、どうしても毎回、息をするのを忘れて見入ってしまう「闇が広がる」〜「マイヤーリンク」。この一連の流れはルドルフ最大の見せ場なのですが、同時にトートの見せ場でもあるのです。今回振付けが変わったことで、私の印象としては「トートのダンスが減ったなあ〜」だったのですが、「独立運動」では相変わらずキレのいいダンスを拝ませてくれるうっちートート。素敵だわ悶絶だわ。
「闇が広がる」はいつ聴いてもいいのですが、浦ルドとの相性バッチリですね。内野さんが歌うまくなった分、前回の井上ルドとのデュエットよりいいかもしれない。
 
 毎回毎回エロ炸裂の「マイヤーリンク」ですが、今回もキスシーン、すごかった……
 隣の席の人が「ひいっ」という感じで(初見だったんだろうなあ)息を飲んでいたのが聞こえました……


 さて、カーテンコールは前回同様4回。
 最後の「皇后様・閣下」揃ってのカテコでは、二人が投げキッスをしてくれました! 何てかわいいんだ二人とも。内野さんは幕が降りるまで手を「にぎにぎ」してバイバイしてくれるし。あうううう……
カテコだけ1000円で見せてくれないかなあ梅コマ。(そんなアホな)そうしたら毎日通うのに……!
 


◆今日買ったもの◆
パンフレット¥2000(山口・内野対談のうっちー写真がかっこいい!)
エリザベート・プロフェッショナル版(輸入盤)¥3675


次回へ続く
(11/23の観劇らくがきは下からどうぞ)

Lilyco Kobayashi 2004/無断転載・引用厳禁



らくがき

TOP

inserted by FC2 system