「ウィーンミュージカルコンサート」観賞日記 2008.5/28(水)楽日
@梅田芸術劇場メインホール


「ウィーンミュージカルコンサート」5/28(水)13:30開演
◆キャスト◆
マヤ・ハクフォート
マジャーン・シャキ
マテ・カマラス
ルカス・ペルマン
アンドレ・バウアー


 まず私は、このコンサートに過剰な期待を抱いていなかった、ということを忘れずに書いておきます。「ウィーン版招致一周年記念」という名目が何だか意味不明だったし、すでにウィーン版来日公演を丸ごと見てしまったからには、何も知らなかった頃には戻れない。
 でも、この企画自体は(日本でやるには)すごく贅沢な企画だとは思いました。ご当地ウィーンではいつでも実現しそうなメンバーだし、お客さんにも事欠かないだろうけど、日本で、しかも東京抜きの大阪オンリーで……と考えると、ものすごく贅沢です。ほんと贅沢ですよね。なにせ大阪でウィーンキャストの歌が聞けるんだから。
 なぜ大阪オンリーなのか、そこのところが今ひとつ分からないんですが。もちろん、去年の丸ごと引越し公演=大阪オンリーだったのは承知してます。東京ではちょうど良い劇場が調整できなかったのか、最初から新宿コマの予定だったのかは不明ですが、とにかく来日公演に関してだけは、大阪に住んでて良かったと思う。
 演劇に関しては「また東京か」とか「また東京オンリーか」と言うのがほとんどなので、ウィーン盤エリザがきっかけで観劇人生に足を突っ込んでしまった私にとっては、(よくよく考えてみれば)ものすごく恵まれた環境にあったんですよね。これがもし、いつものように東京優先の状態だったら……うわあ、考えたくないな。
 きっと縁があったんだ、としか言いようがない。中学生の頃、松田聖子の全英語アルバムがとて好きで、その中でもかなり好きだった「TOUCH ME」がリーヴァイさんの曲だと知ったのは確か去年だったか一昨年だったか、とにかくあの衝撃は忘れない。こうして、過去と現在が知らずにつながってしまうのが「縁」なのでしょう。
 しかし、公演とコンサートはやっぱり別物だし……と一歩引いて考えていたことも事実です。私にとっては「MOZART!」の原語版が聴けるというのが最大の誘惑で、ドイツ語で「Gold von den Sternen(星から降る金)」を聴けたら、それだけで5000円の価値はあると思っていた。
 あとは、まだ私にはまったく未知の演目である「ロミオとジュリエット」「レベッカ」を、初聴き=本場の原語版で聴けるというのも良かったかな。
「ダンス・オブ・ヴァンパイア」については、ウィーン盤CDは持っているけど東宝版の公演は見たことがないです。だって東京オンリーだったので。そしてウィーン盤CDも、ざっと聴いただけで曲と曲の区別がつくほどは覚えていなかった。何故なら歌詞がついてないから。私は歌詞を見ないとその曲が頭に入らないので、歌詞なしは辛いのだ。「M!」はウィーン盤にちゃんと歌詞がついてたのに……まあ対訳がなかったから、東宝版が大阪に来るまで一体どんな話なのかも不明だったけど、それでもドイツ語の歌詞があったから「覚える」作業に支障はなかったんです。そのおかげで、「M!」は私にとっては、ウィーン盤を聞き込んで、曲もしっかり覚えてから観賞できた演目でした。
 ヴァンパイアの話に戻ります。ラストの「Finale」だけは、なじみのある曲だったしアンサンブルがカッコよかったし、絶対歌えるようになりたいと必死でネットで歌詞を探したので、これだけは歌えますけど。あれ、アンサンブル部分で『ルチファー・ローゼン』というフレーズが以降すべて韻を踏んでいるのが快感です……あんまり歌詞の意味は把握していないけど、まあラストで英語が出てくるので「おまえの血を飲んで魂も食っちゃうぞ〜我々を止めるものは何もない〜」というような感じだと……
 だから、曲目が発表されても「エリザとM!以外はほとんど知らないなあ、まあそれもまた楽しみか」などとのんきに構えていました。キャストの歌が凄いのはもう去年の公演で分かっていたし。
 しかし私は、ウィーンミュージカル限定ファン……最近はけっこう広がりつつあるんだけど……とは言え、こんなではまだまだ「ウィーンミュージカルオタク」とは名乗れませんなあ。役者さん自体のファンというのでもないし、日本でやっていないウィーンミュージカルの情報を進んで収集したりもしないし、輸入CDを買ったりもしないし。単に不精者ってだけか。でもその代わり、アンテナが反応した時の行動は素早いんですよ。そのアンテナが動くまでに時間がかかる体質。

 しかし、終わってみると(いつものことだけど)身体中にウィーンミュージカルの音色が染み込んでしまって興奮状態に。「やっぱりウィーンミュージカルはいい! 他のミュージカルとは何かが違うんだよね!」という感じです。ああ、「ロミジュリ」も「レベッカ」もCD欲しくなってしまったよ!
 え、ロミジュリは純正ウィーンミュージカルじゃない? フランス産だって? いや、それはどうでもいい。とにかくドイツ語で聴きたい。
 物販は開場後、休憩中、終演後と常にすごい混雑だったので、じっくり商品を見られなかったんですよね。じっくり見るとヤバイっていう危機感があったことも事実ですが、開場後パンフレットを購入したとき、ぼんやりとロミジュリのCDを確認したぐらい。レベッカのCDがあるかどうかは確認していませんが、売ってたはずですよね?
 タワーに行けば、ロミジュリやレベッカの輸入盤も置いてるかなあ。
 でも私、他の演目に手を出すぐらいならエリザの各国版を買えよって自分で突っ込んでしまいたい。分かっちゃいるけど、どれから手をつければいいのやら、優先順位がわからなくて。
 エリザ関係では、現時点ではオリジナル・ウィーンキャスト盤(ピア&ウーヴェ)、1996年のウィーンライブ盤、あとカラオケにつられて「エリザベート プロフェッショナル」という謎のCDの合計3枚を所有。
 どなたかアドバイス下さい……スタジオ盤で新曲が追加されてるCDと言えば、どれ買えばいいんでしょう?

 では、演目ごとに感想を書いていきますね。
 (以下、各キャストのお名前は名字・敬称略)

「TANZ DER VAMPIRE」バンパイアのダンス

M-1:OVERTÜRE
オーバーチュア(オーケストラ)

M-2:EINLADUNG ZUM BALL
お前を招待しよう(アンドレ)

M-3:DRAUSSEN IST FREIHEIT
外は自由(ルカス&マジャーン)

M-4:FÜR SARAH
サラへ(ルカス)

M-5:TOT ZU SEIN KOMISCH
死んじゃうなんて(マヤ)

M-6:TOTALE FINSTERNIS
愛のデュエット(アンドレ&マジャーン)

M-7:DIE UNSTILLBARE GIER
抑えがたい欲望(マテ)

 冒頭のオーバーチュアで既に感動、のけぞる私。音楽監督と指揮者がウィーンの方(指揮者はアドリアン・マンツ氏)だからなのか、場所がオケピではなく舞台上だからなのか、それとも他に理由があるのか……日本の、しかも東宝御用達のオケなのに(失礼な言い方してスイマセン)音が違う、なんか違う! 明らかに違っている! 東宝版を10回以上見たからこそ確信できる、この違い。
 何と言えばいいのか……ソリッド……尖ってる!
 今回、オーケストラと合唱団には感謝のキッスを捧げたい気分なのです。本当、それぐらい素晴らしかった。何が違うんだ、東宝版と。真剣に考えてしまった。
 さて、前述の通り、この演目についてはウィーン盤CDは一応聴いた。でも東宝版は未見。ウィーン盤でも覚えてるのはフィナーレ(あとオーバーチュア)だけなので、ほとんど初聴きと変わらない状態でした。
 梅芸のサイト内特設ページでは事前に曲目(の一部?)が発表されていたので、辛うじて「サラへ」を復習したぐらいかな。
 この作品は、フィナーレをはじめとして、なんだか聴いたことのあるメロディーだなという曲が多数あります。というのも既存のヒット曲を使っているから。
 私は洋楽オンチなので「フィナーレ=今夜はエンジェル」だけしか分からなかったのですが、パンフレットには他の元曲の情報も載っていました。

 キャストの皆さんについて。まず、私は初めてまともに目にするマジャーン。去年はヘレネ役、あと確かこの人がシシィのセカンドだったんじゃないのかな。名前だけは去年から色々な場所で見ていたので。
 ヘレネと言っても、あの役自体にインパクトがあるかと言えばそうでもないので、名前を覚えるには難しいポジションだったかもしれない。特に私は、来日エリザは一回しか見なかったのでメインキャストを追うのに精一杯で、ヘレネまでチェックできませんでした。だから今回マジャーンを見ること、それも楽しみのひとつでした。
 そうしたら、声もお顔もすっごい可愛い! 可愛いけど歌はプロフェッショナル! この人のシシィも見てみたいと思わせる実力派女優さんでした。いや本当に声が可憐なの。ルカスとは見た目も声質も相性ぴったり、目と耳の保養ですよ。
 あと私はすっかり勘違いしていたんだけど、アンドレさんは去年フランツィ役で来たんじゃなかったんですね。てっきりそうだとばかり……今回が初来日だそうですが、フランツやる人って何気に美声の人が多くないですか、ウィーンも日本も。すっかりファンになってしまいました。役柄としては、エリザのフランツはM!のレオポルドなど、派手な主役ではないけれど居なくては絶対に困る人、ですね。ほんと声がいいよ〜。
 ルカスは、まあ、アレです。いつ見てもすっげえ美形、としか言いようがありませんね(笑)。君ひとりでキラキラしすぎてるだろ、と言いたいぐらい美しい。本当に王子様みたいな人。それで才能も実力もあるんだから、神様って不公平だなあ。「サラへ」は彼の声にぴったりだな、という印象。
 その王子様ルカスと対照的なワイルド・マテ。迫力ある歌い方は相変わらずで、動きもアグレッシブ。ラストナンバーはすごい迫力でした。
 マヤさんが歌った曲は、いちばん印象的だったかも。舞台見たいな、と思わせてくれる場面でした。コンサートと言っても皆さんしっかり演技しているし、セットもそれなりに芝居仕様になっているので、私としては「コンサート」という感じが、不思議なほどしなかったですね。衣装やセットは本公演とは違うけれど、ここまでしてくれたら立派なミュージカルと言っていいのでは。行く前は特に期待していなかったんですが、いざ始まってみればコンサートだからって物足りないと思いませんでしたもん。本気で。定価の価値は十分ありました。

「ROMEO&JULIA」ロミオとジュリエット

M-8:DER BALL 1
舞踏会(オーケストラ)

M-9:DER BARKON
バルコニー(ルカス&マジャーン)

M-10:HERRSCHER DER WELT
世界の覇者(ルカス&アンドレ&マテ)

M-11:SIEHE DA,SIE LIEBT
見て、彼女は恋してる(マヤ)

M-12:MEIN LIEBES KIND
愛しい我が娘よ(アンドレ)

M-13:LIEBE
愛(ルカス&マジャーン)

 さあ、これが正真正銘、初聴きの「ロミオとジュリエット」。
 というか、まったく何も知らない状態。フランス産ミュージカルということさえ、パンフを読むまで知らなかったんですから。と言うことは、ロミジュリに限って言えば(日本で例えれば)東宝版みたいなものなのかな。よその国の演目の翻訳版ってことで。
 でも原作が原作なだけに、特に説明されなくても話の筋が分かるのがいいところ。
 フランス産ミュージカルって今までほとんど意識していなかったのですが、他にも有名な演目ってあるのかな。あとでミュージカル本を調べてみよう。
 これはもう、ルカスとマジャーンのためにある演目と言いたいぐらい、二人ともハマっていました。それもそもはず、本当にこの二人でやっていた舞台らしい。可憐で可愛いジュリエットと若々しいロミオ、この二人に本当にぴったり。ラストナンバーの「愛(リーベ)」が良かったし、今いちばんCDを聞きたい演目です。
「世界の覇者」は、男性キャスト全員が弾けてて面白かった……確かこの曲でマテが客席を走ったんだっけか。男性が全員暴れまくってた印象。マヤさんはさすが、聴かせます。

「REBECCA」レベッカ

M-14:PROLOG
プロローグ(マジャーン)

M-15:EHRLICHKEIT UND VERTRAUEN
正直さと信頼(アンドレ)

M-16:I'M AN AMERICAN WOMAN
私はアメリカン・ウーマン(マヤ)

M-17:GOTT,WARUM?
神よ、何故?(アンドレ)

M-18:JENSEITS DER NACHT
夜が明ける(マテ&マジャーン)

M-19:REBECCA
レベッカ(マヤ)

 現在、東京では東宝版公演中。東京だけなので私はやっぱり見られません。でもその代わりに、本場ウィーンキャストで初めて聴けたので良しとしよう。
 これはマヤさんの変身ぶりが見物でした。アメリカ女性になりきってると思ったら、ラストナンバーではいかにもクンツェ&リーヴァイっぽいダークな曲を披露してくれました。
 やっぱりいいなあ、クンツェ&リーヴァイ。この二人の作るミュージカルって、必ずどこかに「死」や「闇」、「もう一人の自分」に支配される、というテーマがありますよね。私はまだ原作を読んだことがないし、ヒッチコックの映画も見たことがないんだけど「既に死んでいる存在」であるレベッカの影に翻弄される「わたし」という設定は、オリジナル脚本ではないとは言え、如何にもこのウィーンコンビらしいと思うのです。

「MOZART!」モーツァルト!

M-20:HIER IN WIEN!
ここはウィーン(オーケストラ&コーラス)

M-21:DICH KENNEN HEISST DICH LIEBEN
愛していれば分かりあえる(ルカス&マジャーン)

M-22:SHLIESS DEIN HERZ IN EISEN SEIN
心を鉄に閉じ込めて(アンドレ)

M-23:IRGENDWO WIRD IMMER GETANZT
ダンスはやめられない(マジャーン)

M-24:GOLD VON DEN STERNEN
星から降る金(マヤ)

M-25:WIE KANN ES MÖGLICH SEIN?
神よ、何故許される(マテ)

M-26:WIE WIRD MAN SEINEN SCHATTEN LOS?
影を逃れて(ルカス+キャスト全員)

 実はいちばん期待していたのが、この「モーツァルト!」です。私にとってはエリザと並ぶ双璧ウィーンミュージカルだし、「星から降る金」があるし。リーヴァイさんってエリザでもすごいと思ったけど、私はこの作品で、改めてリーヴァイさんってすごいなあと実感しました。だから純粋に、音楽だけでもすごく好みで、しかも長い間対訳がないまま聴いていたもんだから、もうドイツ語で刷り込みされちゃってる作品です。
 でも東宝版もかなり好きです。エリザとは違う意味で、作品まるごと好きという感じ。しかし、考えれば考えるほど、なんでこんなダークな作品群が、個人単位ではなく日本という国単位で受けるのかなあと思いますね。死んで終わり、という悲劇がそんなに好きなのかな日本は。
 でも、別に観賞して鬱になる訳じゃない。むしろ音楽の良さに感動するばかり。日本人の自分も良く分かりませんけど、こういう作品を受け入れられる土壌が、この国にはあるのかもしれませんね。遺伝子のどこかに。
「星から降る金」はもう、ただ聴き入るばかり。生の舞台で、しかもドイツ語で聴ける幸せをかみ締める。六年だったか、七年だったか前にamazon@ドイツで視聴して、その場でこの曲を愛してしまって、海外通販するのは障害が多すぎたのでタワーレコードに輸入盤を探しに行って……
 個人的に、色々と思い出の多い作品なのです。
 まさかのコーラスオンリー「ここはウィーン」も嬉しかった。
 そしてラストはもう、すごく! すっごく!! 良かった。最後はヴォルフのソロナンバーとしてではなく、オーラス(フィナーレ)の演出っぽく全員が出て来てくれて、コーラスも最高で、もう私は鳥肌ものでした。もはやこれはコンサートじゃないって!! 立派なミュージカルの舞台になってるってば!
 いやあ、エリザもいいけど私はM!もウィーン版が見くてたまらない。さすがにそれは不可能だろうけど、せめてDVD売ってないだろうか……あれば絶対買うんだけどな、字幕なくてもいいから。規格外は困るけど。
 あ、追加でマジャーンのコンスタンツェ。演技の幅が広くて感動しました! この曲自体が好きというのもあるけど、可憐なお姫様の一方でコンスタンツェみたいな役もハマってるのは結構すごいことだ。
 思い出したけど、「愛していれば〜」の冒頭でルカス・ヴォルフとマジャーン・コンスが「ちょっと待って」「いやよ!」と日本語で掛け合いをしてました……よね? 二人とも可愛かったなあ、あれにも微笑ましい笑い声が起こっていました。

「ELISABETH」エリザベート

M-27:PROLOG
プロローグ(オーケストラ&コーラス+マテ&ルカス)

M-28:WIE DU
パパみたいに(アンドレ&マジャーン)

M-29:KEIN KOMMEN OHNE GEH'N
愛と死の輪舞(マテ@
オール日本語!

M-30;DER LETZTE TANZ
最後のダンス(マテ)

M-31:ICH GEHÖR NUR MIR
私だけに(マヤ)

M-32:ELISABETH,MACH AUF
エリザベート、開けておくれ(アンドレ&マヤ&マテ)

M-33:WENN ICH TANZEN WILL
私が踊る時(マヤ&マテ)

M-34:WENN ICH DEIN SPIEGEL WÄR
僕はママの鏡だから(ルカス&マヤ)

M-35:DIE SCHATTEN WERDEN LÄNGER
闇が広がる(ルカス&マテ)

M-36:BOOTE IN DER NACHT
夜のボート(アンドレ&マヤ)

M-37:DER SCHLEIER FÄLLT
ヴェールが降りる(マヤ&マテ)

M-38:BOWS
カーテンコール(全員)

アンコール曲(全員でメドレー+合唱)

闇が広がる(エリザ)
世界の覇者(ロミジュリ)
愛と死の輪舞
(マテがワンフレーズ歌い、あとを歌ったのは客・笑)
愛(ロミジュリ)


 そして真打ち、ウィーンミュージカルの代名詞エリザです。
 書くのを忘れていましたが、今回の舞台では各作品ごとに字幕で短い解説がついていました。各曲ごとに(歌詞全部ではないけれど)歌詞の大意が説明されていましたが、なんとエリザになった途端、その解説が一切なくなったのです。初演が何年だとか、そういう説明も一切なし。もちろん曲タイトルも歌詞の意味もなし。これにはちょっと笑ってしまいましたよ。だって「説明しなくても知ってるでしょ?」って言われてるようなもんじゃないですか。確かに知ってるけど。知り尽くしてるけど。このコンサートに来る人でエリザ知らないって人は、滅多にいなかったんだろうけど……
 全曲が素晴らしかったんで、もうクドクド書きません。全員良かった。あ、特筆すべきはマジャーンかな。彼女は少女時代のシシィ担当だったんですが、「パパみたいに」の時にアンドレと髪を互いにぐしゃぐしゃしたり、マジャーンが父マックスのトランクの中にすっぽり入り込んだりして、客席が爆笑。最後にはマジャーン自身笑い声になったりして、すごく可愛らしかったです。
 それから……私はプロローグも最高に興奮しましたね。これはアンサンブル曲なので無理だろ、と思っていたし、実際サイト上でもこの曲目はなかったと思う。だから期待していなかったんですが、イントロが流れてきた瞬間、また鳥肌が立ちました。でもその時点では「オケだけの構成かな」と思った。そうしたらコーラス部分に突入しそうで、まさかコーラスやっちゃうのかと期待してオペラグラスで奥のコーラス隊を見てみたら、しっかりと譜面を前に立って準備してる!
 う、うれしい……悶絶。何故なら私のウィーンフェチの始まりは、何たってこのエリザのプロローグなのだから……
 びっくりしたと言えばマテの「愛と死の輪舞」。この曲は宝塚版のための書き下ろしで、東宝版でも受け継がれているとは言え日本オリジナルの曲です。ただ、音源としてはドイツ語バージョンも存在することは知っていたので(エリザベート・プロフェッショナル収録)、普通にドイツ語で歌うだろうと思い込んでいたら、ま、まさか日本語だとは……!
 しかも私は、冒頭もしくは1コーラスだけのファンサービスかな、と思ったのに、マテったらば全部日本語で歌い切ってしまいました。すごいです。発音も、ぎこちないのは仕方ないとしても笑ってしまうほど不自然ではなかったし、当たり前ですが日本語で歌っても上手いのは変わらないんですよね。こんな上手い……というかハラハラしない「愛と死の輪舞」を聴くのは初めてだ。あ、男性ボーカルという意味でね。(だから一路トートは除外。そして聴いたことがないので山口&武田トートも除外)
 私は内野トートを愛しちゃっていますが、それでもやっぱり毎回この歌でハラハラしたことは否めない訳で、マテみたいに歌えるようになってほしいな〜。と言うか、もう彼はトートやらないっぽいから、今さら言っても無駄なのかしら。
 どうでもいいんですが、外国の人に
「禁じられた愛のタブーに♪」と歌われると、日本人としてかなり恥ずかしくなるのは私だけでしょうか。この短いフレーズの中で「禁じられた」と「禁忌(タブー)」の意味がダブってるから。
「青い血を流す傷口は〜♪」というのもかなり恥ずかし……いや、お耽美トートも好きなんですよ。念のため。
「闇が広がる」も良かったなあー! いや、全部良かったんだけど。
 ラスト、マテがマヤを抱っこしてキメてくれて、やっとカタルシスが昇華した! と私は思いましたね。去年の来日公演ではああいうキメではなかったので、ちょっと物足りないかなと思ったんです。(東宝2004年版からのドライなラストは好きなんだけど)そういう意味では、今回のラストポーズは最高でした。マヤが最後の瞬間に腕をだらーんと下げるのも、様式美でステキだ!

 さてさて、本公演とほとんど変わらない長い時間、たっぷりと歌って演技して楽しませてくれた皆さん。曲と曲の間に、一人ずつトークコーナーがあって、そこで通訳をしていた高嶋さんというおじさんが、またいいキャラクターでしてね。
 ただ事務的に通訳するだけじゃなくて、キャストと信頼関係があるんだなあと思わせてくれる面白いトーク全開でした。ウィーンミュージカルとどういう関係なのかな、と思ったら、最初の最初、宝塚エリザの時代から関わりのある方だそうで、「こんなに(エリザが)日本に定着するとは思わなかった」ということです。影で支えてくれた方なんですね。とにかくキャストが、高嶋さんを信頼しているのが目に見えてハッキリしていて、温かい雰囲気で、とても良かったんですよ。思わずファンになってしまいました、芸人さんじゃないのに。芸人どころかオペラや芝居の演出家、しかも大学の先生らしいのに。

……と、そんな訳で、私が見たのは千秋楽の一回きりでしたが、日本にいながら本場ドイツの舞台を見る幸せに浸り、ウィーンミュージカルの魅力を再認識した一日でもありました。キャスト全員、そして梅田芸術劇場にもお礼を言います。チケットの問題とか、ライブCDの予約販売が来場者限定なのはあまりにも不公平だとか、宣伝の仕方も何とかならんのかとか(劇場前のアピールの無さは毎度のことながら情けない)、注文はまだ多々ありますが、それでも感動の方が大きかったので、今はお礼だけを言いたいです。
 
 千秋楽だったので、アンコールはすごく長かった。劇場を出たあと手を見たら、拍手のしすぎで皮がめくれていた私……(どんな拍手の仕方を?)
 まず「闇が広がる」の全員メドレー(これもライブCDに収録してくれないものか)、ロミジュリから2曲。この間にマテがいきなり「その瞳が〜」とアカペラで歌い出し、客席に振ったのでその後は客席で「まなざしが突き刺さる〜♪」と合唱しました。また日本に戻ってきますという発言もあったけど(マヤさんだっけ?)、どうかそれが実現しますように。今回の客入りがどうだったかはっきりとは分からないにしても、今後一年に一回でいいからこんなコンサートが見られたら幸せだから。
 キャスト全員がこのコンサートを続けたいと思ってくれるなら、もっと幸せ。彼らにとって日本は遠いでしょうけど、私たちにとってもウィーンは果てしなく遠い……
 ずっと大阪だけで続けてくれとは言わないけど、梅芸という劇場を気に入ってくれたら、大阪人としてはやっぱり幸せ。次の楽しみはとりあえず、7月中旬予定のライブCDですか。いつ収録したんだろ。(楽日ではないはず)本当は映像が欲しいんだけど、言い出すとキリがないから。東宝エリザの映像がまったく商品化しないことを考えれば、それも無理もないのかな、って思うし。
 
 とにか、く本当に幸せでした!
 ああ本当に、私はこの音楽が好きなんだな……って実感できた。
 キャストの皆さん、スタッフの皆さん、どうもありがとう!
 
 

◆買ったもの◆
プログラム(パンフレット)¥2000
この公演のライブCD・2枚組の予約(7月中旬発送予定)¥4200(送料¥500)

Lilyco Kobayashi 2007/無断転載・引用厳禁

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